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顔面神経麻痺

顔面神経(第VII脳神経)の障害によって、表情筋の運動麻痺(主に片側性)をきたす病態。障害部位により「中枢性」と「末梢性」に大別されます。

分類

中枢性顔面神経麻痺

  • 顔面神経核またはそれ以前(皮質橋路)の障害 
  • 原因:脳梗塞、脳出血、脳腫瘍、脱髄疾患など
  • 額の筋肉は両側性支配のため、額のしわ寄せが保たれるのが特徴

末梢性顔面神経麻痺

  • 顔面神経核より末梢の障害
  • 原因:ベル麻痺、ハント症候群、外傷、腫瘍、術後障害、感染など
  • 額の筋肉も麻痺して額のしわ寄せができない
病因 説明
ベル麻痺
Bell's palsy
HSV-1(単純ヘルペスウイルス)再活性化による顔面神経炎が原因と考えられている
ハント症候群
Ramsay Hunt症候群
VZV(水痘・帯状疱疹ウイルス)による顔面神経の炎症
耳介疱疹、難聴、めまいを伴う
頭部外傷・術後 側頭骨骨折、中耳手術、顎下腺腫瘍摘出後など
腫瘍性 聴神経鞘腫、顔面神経鞘腫、基底部腫瘍、腫瘍の浸潤や圧迫

症状

末梢性 中枢性
額を含めた片側全体の麻痺 下顔面優位の麻痺(額のしわ寄せ可能)
口角下垂、眼閉不能、涙液異常 額・眼の動きは比較的保たれる
味覚障害(舌前2/3) なし(皮質橋路は味覚に関与しない)
耳鳴り、過敏聴取(アブミ骨筋麻痺) 聴神経鞘腫では聴力障害

診断

  • 神経学的診察(柳原法):顔面の動き(額しわ寄せ、閉眼、口角挙上など)を確認
  • MRI:橋(中枢性)、顔面神経管・内耳道(末梢性)を評価
  • 血液検査:感染・自己免疫疾患の除外、ハント症候群では血清抗体価や特異的IgM
  • 聴力検査:ハント症候群や腫瘍性疾患の評価
  • 電気診断(ENoG, Blink Reflex):予後予測、損傷部位同定

中枢性顔面神経麻痺の治療

  • 原疾患の治療(脳梗塞、出血、腫瘍など)
  • 顔面麻痺は症候の一部として扱う

末梢性顔面神経麻痺の治療

  • ステロイド療法(プレドニゾロン60mg/日~)、発症72時間以内の開始が効果的
  • 抗ウイルス薬:ハント症候群では必須
  • ビタミンB12
  • 眼の保護:閉眼障害による角膜乾燥に対して人工涙液・眼帯
  • リハビリテーション:表情筋運動訓練

予後

ベル麻痺は一般的に予後良好な経過を辿ります。約7割は自然治癒し、適切な治療を施行すれば9割は完治します。一方、ハント症候群の治癒率は未だ7割に満たない状況です。治癒率向上のためには、早期診断・早期治療が不可欠です。また、近年、帯状疱疹ワクチンの有効性について報告されています。ハント症候群は帯状疱疹の一亜型であり、ワクチンによる発症予防や重症化の軽減効果が期待されるところです。

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