顔面痙攣
顔面神経(第VII脳神経)が、脳幹部から出た直後の神経根部(REZ:root exit zone)で血管により圧迫され、異常興奮を起こすことにより生じる不随意運動です。
片側のみに起こり、初発は眼輪筋から始まり、次第に口角、頬、顎へと拡がります。50歳代以降の女性に多く、緊張時に強くなる傾向があり、疲労やストレス、不安などで悪化します。
原因
- 顔面神経が脳幹から出た直後の神経根部(REZ:root exit zone)を血管が接して圧迫する
- 責任血管は、後下小脳動脈、椎骨動脈、前下小脳動脈
- 稀に、脳腫瘍や動静脈奇形、脱髄疾患が原因のことがある
診断
- 臨床所見:顔面片側の不規則な持続的・間欠的筋萎縮
- MRI(3D-CISS/FIESTA):微細な神経繊維や脳神経と血管の空間関係を高分解能で描出可能→顔面神経と責任血管の接触を明確に評価できる
- 3D-TOF MRA:非造影で動脈描出可能、血管の走行や異常血管を把握できる
治療
- 経過観察:ストレス管理
- 薬物療法:抗痙攣剤(カルバマゼピン、クロナゼパム)、筋弛緩剤(バクロフェン)
- ボツリヌス毒素注射(ボトックス)
- 眼輪筋・口輪筋など痙攣部位に直接注射して筋肉を麻痺させ、痙攣を起こりにくくする
- 効果は3~4ヶ月持続
- 低侵襲かつ即効性
- 長期投与で効果減弱や局所萎縮のリスク
- 微小血管減圧術
- 薬剤抵抗例に選択
- 全身麻酔下に、耳介後方の頭蓋骨に2cm程度の穴を開け、手術用顕微鏡下に圧迫している血管を顔面神経から離して、再び圧迫しないように固定する根治術
- 術中ABR(聴性脳幹反応)モニタリングにより、顔面神経と並走する聴神経を保護する
- 寛解率:85~90%
- 再発率:5~9%
- 合併症:聴力障害、顔面麻痺、嚥下障害、髄液漏