頚椎後縦靱帯骨化症
頚椎後縦靱帯骨化症(OPLL:Ossification of the Posterior Longitudinal Ligament)は、本来は柔らかい組織である頚椎の後縦靱帯が骨化し、脊髄を圧迫する病気です。
進行すると手足のしびれ、脱力、歩行障害、排尿・排便障害などの症状を引き起こすことがあり、国の指定難病にもなっています。
後縦靱帯とは?
後縦靱帯は、背骨の内側を縦に走る靱帯で、脊椎を支える役割を担っています。
この靱帯が異常に骨化(石灰化)して肥厚し、徐々に脊髄を圧迫することで、神経の働きに支障をきたすようになります。
原因
原因は明確にはわかっていませんが、以下のような要因が関与すると考えられています。
- 遺伝的背景(家族歴があることも)
- 40~60代の男性に多い
- 糖尿病や肥満などの生活習慣病との関連
- 日本を含むアジア人に多くみられる傾向
症状
OPLLの特徴は進行がゆっくりで、初期は自覚しにくいことです。
- 手足のしびれ・感覚低下
- 細かい動作の困難(箸が使いにくい、字が書きにくい)
- 歩行時のふらつき、階段でつまずく
- 脚に力が入りにくい、こわばり
- 排尿・排便障害(進行例)
軽い症状でも転倒や交通事故をきっかけに急激に悪化することがあるため注意が必要です。
診断
- X線検査:後縦靱帯の骨化像を確認
- MRI検査:脊髄の圧迫の有無・程度を評価
- CT検査:骨化の範囲や形状の詳細確認に有用
治療
保存療法(症状が軽度の場合)
- 経過観察、日常生活指導
- 消炎鎮痛薬や神経障害性疼痛薬の内服
- 頚椎カラー装着による安静
- 転倒予防・過度な運動制限
手術療法(進行例・日常生活に支障がある場合)
- 後方除圧術(椎弓形成術など)
- 前方除圧固定術(骨化が局所に限局している場合)
- 手術の選択は骨化の広がり、脊髄の圧迫の程度、年齢や全身状態などを総合的に判断します。