腓骨神経麻痺
腓骨神経麻痺とは、膝の外側から足の甲へ走る「総腓骨神経」あるいはその枝(深腓骨神経・浅腓骨神経)」が圧迫・損傷されることにより、足首や足の感覚・運動に障害が起こる状態です。
特に足首を上げる筋肉(前脛骨筋など)が働かなくなるため、「下垂足(drop foot)」と呼ばれる状態になり、歩行時につまずきやすくなるのが特徴です。
原因
- 膝の外側(腓骨頭部)での神経圧迫が最多
- 長時間の正座、しゃがみ込み、ギプス固定後
- 長時間の体位保持(手術後・入院中など)
- やせ型の方(皮下脂肪が少なく神経が圧迫されやすい)
- 外傷(骨折・打撲)による神経損傷
- 腫瘍・ガングリオンによる圧迫
- 糖尿病、膠原病などの末梢神経障害の一環
- 手術(人工膝関節置換術など)後の合併症としても見られる
症状
- 足首や足指が上がらない(下垂足)
- 足の甲~親指・第2趾にかけてのしびれ・感覚鈍麻
- 歩くときに足が引っかかる、つまずきやすい
- 足がパタパタと着地するような歩き方(鶏歩)
- 重症例では、筋萎縮や麻痺の固定化をきたすことも
診断
- 問診・神経学的診察(感覚・筋力評価)
- ティネル徴候(腓骨頭部の叩打で放散痛がある)
- 神経伝導検査・筋電図(EMG):障害部位や麻痺の程度を評価
- MRIや超音波検査で圧迫原因(腫瘍・ガングリオンなど)の確認
療法
保存療法(軽症・早期例)
- 神経圧迫の除去(姿勢指導、パッド使用、生活動作の見直し)
- 足首を持ち上げる装具(短下肢装具、足関節背屈装具)の使用
- 理学療法(筋力維持、神経滑走訓練、歩行訓練)
- ビタミンB12製剤の内服や末梢循環改善薬
手術療法(圧迫が明らかで改善が乏しい場合)
- 神経剥離術・減圧術:腫瘍やガングリオンが原因の場合に有効
- 慢性例では神経移行術や腱移行術を検討することもあります