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未破裂脳動脈瘤

脳動脈瘤のうち、未だ破裂していない状態のものを指します。破裂すれば致命的なくも膜下出血(SAH)を引き起こし得るため、破裂リスク評価と治療選択が重要な課題です。
日本人の未破裂脳動脈瘤有病率はおよそ3~5%で、年齢とともに増加します。そのうち約20%は多発性(2つ以上の動脈瘤)で、特に閉経後の女性に見つかることが多いと報告されています。

好発部位

部位 頻度
内頸動脈-後交通動脈分岐部(ICA-Pcom) 約30%
中大脳動脈分岐部(MCA) 約25%
前交通動脈(Acom) 約15%
椎骨-脳底動脈系(VB系) 約10%
内頸動脈洞部(paraclinoid) 約10%

破裂リスク

UCAS Japanという日本人を対象とした我が国の大規模研究では、未破裂脳動脈瘤の平均破裂率は0.95%/年とされています。
「脳卒中ガイドライン2021」によると、破裂率は脳動脈瘤の最大径と相関するため、5〜7mm以上の脳動脈瘤は治療が推奨されます。また、5mm未満であっても、部位(前交通動脈、後交通動脈、椎骨脳底動脈系)や形状(不整形・ブレブなど)の項目に該当する場合は、破裂の危険性が高いとされ、治療等について慎重に検討する必要があります。

脳卒中ガイドライン2021における未破裂脳動脈瘤の治療適応

❶ 大きさ5~7mm以上
❷ 5mm未満であっても、
A) 症候性の脳動脈瘤
B) 前交通動脈、内頸動脈-後交通動脈分岐部に存在する脳脳動脈瘤
C) Dome neck aspect比が大きい・不整形・ブレブを有するなどの形態的特徴を持つ脳動脈瘤

未破裂脳動脈瘤の自然歴(破裂リスク)についての多くの研究をまとめると、破裂の危険性を高める因子としては、以下のようになります。脳動脈瘤の大きさは最も重要な要素ですが、たとえ小さい動脈瘤であっても部位や形状によっては破裂のリスクが高いとされます。また、経過観察中に脳動脈瘤の拡大や形状の変化が見られた場合の年間破裂率は極めて高いと報告されており、迅速な治療を検討すべきと考えられます。

因子 推奨 解説
瘤の大きさ ≥7mm A 7mm以上で破裂率有意上昇。特に10mm以上は年間破裂率1.2〜1.5%以上
部位
Acom, Pcom, VB系
A 前交通動脈瘤、後交通動脈瘤、後方循環(椎骨動脈瘤等)は破裂しやすく、たとえ5mm未満でも注意
不整形
daughter sacなど
B 不規則な形態は壁の脆弱性を反映し、破裂リスク高い
高血圧 B 血圧上昇は壁応力を増加。降圧により破裂率低下可能性あり
喫煙歴 B 血管壁の構造変化と炎症が関与とされる
家族歴
(親等にSAH)
B 特に第一度近親者にSAH既往がある場合、発症率高いとの報告あり
増大傾向 A 経過観察中に瘤径が増加 → 明確な治療適応に転換すべき
多発性動脈瘤 C1 複数瘤を有する場合、破裂リスクが相対的に高くなる可能性あり

治療

開頭クリッピング手術と血管内治療があります。開頭クリッピング手術は、手術用顕微鏡下に脳動脈瘤の基部をクリップで閉鎖する治療法です。血管内治療は、脳動脈瘤内にコイルを挿入するコイル塞栓術です。近年、血管内手術については新しいデバイスの導入が進み、バルーンやステントを併用して、安全かつ確実に龍を閉塞する手技が確立されてきています。
クリッピング術とコイル塞栓術のいずれを選択するかは、患者背景(年齢、合併症など)や症状、脳動脈瘤の大きさ・部位・形状等を考慮のうえ慎重に検討されます。

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