大腿骨頸部骨折
大腿骨の付け根にある「頸部」と呼ばれる部分が折れる骨折です。
特に高齢者が転倒した際に多く発生することから、「寝たきりの原因となる骨折」として広く知られています。
早期の診断と適切な治療、そして術後のリハビリが、回復と生活の質を左右する重要な要素です。
原因とリスク因子
- 転倒(段差・浴室・トイレなどの転びやすい場所で起こる)
- 骨粗鬆症(骨の強度が低下している状態)
- 筋力低下やバランス感覚の低下
- 過去の骨折歴や運動不足
- 一部では若年者の高エネルギー外傷(交通事故・スポーツなど)でも発生
症状
- 立てない・歩けない
- 股関節周辺の強い痛み
- 足が外側にねじれて短くなる(患肢短縮・外旋)
- 転倒後、立ち上がれない・動けないといった状態が典型的
診断
- X線検査:骨折の有無と位置(内側・外側)を確認
- CTやMRI:骨折線が不明瞭な場合や早期発見に有効
- 骨密度検査(DXA)も併せて行い、骨粗鬆症の評価が重要
治療
骨折の部位・ずれの程度・年齢・全身状態によって治療方針を決定します。
手術療法(標準的治療)
人工骨頭置換術(BHA)
高齢者で骨癒合が期待しにくい場合に、骨頭を人工物に置換
人工股関節全置換術(THA)
若年者や活動性が高い方に適応されることが多い
骨接合術(スクリュー固定)
骨の質が良く、骨頭温存が可能な若年者などに選択
保存療法(手術が困難な場合)
- 寝たきりリスクが高いため、可能な限り早期手術が望まれる
- やむを得ず手術が困難な場合は、安静+鎮痛+緩やかなリハビリで対応
術後のリハビリと予後
- 術後早期からの離床とリハビリが非常に重要
- 寝たきりを防ぐためには、多職種連携による機能回復支援が不可欠
- 骨粗鬆症治療や再転倒予防指導も含めた包括的ケアが必要