前十字靭帯損傷
前十字靭帯は、膝関節の安定性を保つ最も重要な靱帯の一つです。
この靱帯が損傷または断裂すると、膝が不安定になり、スポーツや日常生活で膝が「抜ける」感覚(膝くずれ)が生じます。
スポーツ外傷の中でも特に多く疾患のうちのひとつです。
主な原因と受傷シーン
- ジャンプの着地や急停止・急方向転換
- スキー・サッカー・バスケットボールなどのスポーツ中
- 他選手との接触や自分の動作による「非接触型外傷」が多い
- 前十字靭帯単独損傷だけでなく、半月板損傷や内側側副靱帯損傷を合併することも
主な症状
- 「ブチッ」と音がして膝が外れたような感覚
- 急な腫れ(関節内出血)
- 膝の不安定感(膝くずれ)
- 痛み・荷重困難・可動域制限
- 受傷直後は歩けるが、時間経過で腫れや不安定性が顕在化することも
治療
保存療法(活動量が少ない高齢者・軽度損傷・再建希望なしの場合)
- 装具療法(膝装具)による安定性確保
- リハビリによる筋力強化と代償機能の獲得
- ただし、高い活動レベルを必要とする人には再発リスクが高く非推奨
手術療法(前十字靭帯再建術)
- 完全断裂・スポーツ復帰を希望する若年者には標準治療
- 自家腱(ハムストリングス腱や膝蓋腱)を用いた靭帯再建術
- 術後6か月~1年のリハビリを経て競技復帰を目指す
- 再断裂や反対側ACL損傷のリスクにも注意が必要
術後のリハビリ
- 早期可動域訓練、筋力回復、体幹・股関節の安定性トレーニング
- 競技復帰には段階的な評価(筋力、ジャンプテスト、心理的準備)が必要
- フィジカル+メンタル両面からのサポートが重要