キーンベック病(月状骨軟化症)
手首の中央にある小さな骨である月状骨が血行障害により壊死し、徐々に変形・崩壊していく疾患です。
特に20~40代の利き手側に多く、男性に多い傾向があります。
進行すると強い痛みや関節可動域制限、手首の変形をきたすため、早期発見と専門的な治療が重要です。
月状骨とは?
月状骨は、手首にある8つの手根骨のひとつで、前腕と手の間に位置し、手首の動きを滑らかにする役割を担っています。
この骨に何らかの理由で血流が届かなくなると、骨が壊死し、つぶれてしまうことがあります。
これがキーンベック病です。
主な原因と危険因子
- 手首への繰り返しの衝撃や負荷(スポーツ・作業)
- 月状骨の血流が元々乏しい体質(解剖学的要因)
- 橈骨と尺骨の長さの不均衡(尺骨短縮)
- 外傷や骨折の既往(まれ)
症状
- 手首の中央あたりの鈍痛・圧痛
- 物を握る・持つときの痛み
- 手首の可動域制限(曲げにくい、伸ばしにくい)
- 症状はゆっくり進行することも、急に悪化することもある
診断
X線検査
月状骨の形態変化、壊死・骨硬化の有無を確認
MRI検査
早期の血流障害や骨の壊死状態を詳細に評価
CT検査
骨の変形や関節面の状態を立体的に把握
治療
キーンベック病は進行段階(Lichtman分類)に応じて治療方針が変わります。
保存療法(早期・初期段階)
- 手関節の安静(ギプス固定や装具)
- 作業・スポーツの制限
- 鎮痛薬の内服や局所注射
- 定期的な画像検査による経過観察
手術療法(進行例・変形進行時)
- 血管柄付骨移植:壊死した月状骨を取り除き、血流豊富な血管柄のついた骨を移植して月状骨への血行を再開させる
- 橈骨骨切り術:橈骨を短縮して月状骨にかかる圧を減らす
- 月状骨摘出:末期には、壊死した月状骨を摘出し、そこに腱球を挿入する方法
- 人工月状骨移植:欧米で行われているシリコン製やセラミック製の人工月状骨を挿入して、周囲の骨の変位、変形を予防する治療法