自家培養軟骨移植術 〜再生医療〜
軟骨は、関節の動きを滑らかに保ち、衝撃を吸収するクッションの役割を果たしています。しかし、ケガなどで一度擦り減った軟骨は自然治癒することがありません。たとえば、皮膚の切り傷や骨折は、適切な処置により傷は塞がり、骨もつながります。それに対して軟骨は、血管がないために血液中に含まれる組織修復に必要な成長因子等が供給されず、再生が難しい組織なのです。長年、臨床では損傷した軟骨は自己修復しないというのが常識とされており、治療の中心は、痛みを緩和させる薬物療法やリハビリ、人工関節等の対症療法に限られていました。そのような中で、「自分の軟骨を使って、欠損した部分に新しい軟骨を育てて戻す」という根本的な治療法=再生医療が生まれました。それが 、自家培養軟骨移植術です。
培養方法
- 関節鏡を用いて、膝関節の軟骨を少量採取します。
- 採取した軟骨を、ゲル状のアテロコラーゲンと混合して立体的な形に成型した後、培養します。
- 約4週間培養すると軟骨細胞は増殖し、軟骨基質を産生して本来の軟骨の性質に近づいていきます。
- 自家培養軟骨を、膝関節の軟骨が欠損している部分に移植します。
- 移植した培養軟骨が外れないように、コラーゲン膜で覆って縫合します。
- 自家培養軟骨移植
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移植1年後の関節鏡所見
軟骨の再生を確認
自家培養軟骨は、「膝関節における外傷性軟骨欠損症又は離断性骨軟骨炎」を適応対象として、 2013年4月1日より保険適用になりました。また、2025年5月に「変形性膝関節症」が適応対象に追加されました。
自家培養軟骨移植術は、厚生労働省が定める安全管理基準を満たし、必要な研修の修了や地方厚生局への届出など、所定の手続きを完了した医療機関のみが実施可能な先進医療です。やよいがおか鹿毛病院は当該治療を認可されており、2021年より8例の培養軟骨移植を行なっておりますが、いずれも良好な経過を得ています。当院に通院中の患者さまで自家培養軟骨移植術の適応と判断された場合には、やよいがおか鹿毛病院にて、当院副院長(整形外科医)が治療を行います。
再生医療についてのご質問・ご相談は、当院の膝専門外来にて承っております。
※培養軟骨移植術について、下記Webサイトにも情報が掲載されています。
株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)
https://www.jpte.co.jp/business/regenerative/cultured-cartilage/index.html