肩腱板断裂
肩腱板断裂は、肩関節を安定させ、動かす役割を持つ「腱板(けんばん)」と呼ばれる筋腱組織が、加齢や外傷によって部分的または完全に切れてしまう状態です。
中高年に多く見られ、発症年齢のピークは60代です。男性の方が女性よりも多く、右肩に好発します。
放置すると関節の機能が低下し、生活動作に大きな支障をきたすこともあります。
腱板とは?
腱板は、棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋の4つの筋肉の腱からなる構造で、肩の安定性と運動(特に腕を上げる動作)に欠かせない組織です。
原因とリスク因子
- 加齢による変性(特に60歳以上に多い)
- 繰り返される負担(重労働・スポーツ・介護など)
- 転倒や打撲などの外傷
- 肩峰の形状(先端がとがっていると腱に摩擦が起きやすい)
症状
- 肩の痛み(夜間痛が特徴的)
- 腕が上がらない、または力が入らない
- 動かすとゴリゴリ音がする(軋轢音)
- 洗髪、衣類の着脱、物を持ち上げる動作がつらい
- 痛みが慢性化し、筋力低下を伴うことも
診断
- 理学所見(腱板機能テスト)
- X線検査:骨の変形や石灰化の有無を確認
- 超音波検査:リアルタイムに腱の状態を確認可能
- MRI検査:断裂の有無、範囲、腱の退縮や筋肉の脂肪変性まで詳細に評価
治療
保存療法(軽度~部分断裂・高齢で活動量の低い方など)
- 消炎鎮痛薬や貼付薬
- ステロイド注射(症状が強い場合)
- 理学療法(運動制限予防、筋力維持)
手術療法(完全断裂・機能障害が強い・保存療法が無効な場合)
- 関節鏡視下腱板修復術(内視鏡手術):低侵襲で回復も早い
- 筋腱移行術、リバース型人工肩関節置換術(再建困難例)